3. 給与下落に備え、医師がやっておくべきこと
このように、給与の下落は避けられません。医療ニーズが減少するということは、医師としての仕事が少なくなる、地域や診療科によっては医師が過剰になるということです。そのため、同じ医師でもより高い医療需要に応える医師が求められます。医師としてどのような対策が可能でしょうか。
①専門分野を身につける
まず考えられるのは、地域や診療科で求められる専門分野を身につけることです。2018年度より新専門医制度が始まり、専門医の研修制度が統一化されて標準化されました。キャリアを考え、研修中から専門医を目指す若手医師が増えています。一方で細分化された専門性を高めるだけでは限界があるという現場の声もあります。
高齢者が増え、生活習慣病など複数の慢性疾患を併せ持っていたり、認知症や心疾患を持ちながらがん治療が必要だったりと、専門医の資格だけでは解決できない患者も増えています。
地域や診療科に求められる医療技術や患者とのコミュニケーション能力を身につけ、専門性を高めることが必要です。
今後、需要が高まるといわれているのは、(1)複数の慢性疾患を併せ持つ高齢患者を診ることのできる総合診療医、(2)がん患者の増加に対して認定医師の少ないがん療法専門医、(3)末期がん患者や痛みを和らげる緩和ケア、などです。
②医師不足の地方で開業する
次に考えられるのが、医師不足の地域で開業することです。ただし、いくら医療ニーズが高いといっても、いきなり出身地でもない地方で開業するのはリスクが高いので、まずは地域を絞って、勤務医として働くことをおすすめします。
医師の少ない秋田県、岩手県、北海道の医療圏では、都内など医師の多い地域に比べて、数百万円から1,000万円も高い報酬条件で医師を募集しています。高い年収を得ることで開業資金を準備することもできます。
また、高齢化の進んだ地方都市の基幹病院で勤務することにより、より多い症例に接して総合診療医や在宅医療などの経験を積み、医師としての専門性を高めることもできます。
開業資金を貯めながら、地域の医療提供体制をよく理解した上で、地域で求められる診療科を中心として開業することがおすすめです。勤務医として地域の行政や患者・医療・介護施設との人脈も作ることができるので、勤務先の病院からの紹介や地域連携もでき、集患や採用に困ることはほとんどないでしょう。
③副業を検討する
3つ目は、勤務医として働きながら、医師の専門性を生かした副業で収入を補う方法です。勤務医としての仕事に支障がないように、副業を行う時間や仕事内容を選びましょう。
健康診断や予防接種など季節の需要の高いスポット勤務や週1回の定期的な非常勤は、本業への影響も少なく、副業としてもおすすめです。また、企業の産業医や医療関連のITやサービス提供会社に対する医療監修、医療専門誌・Web媒体での執筆、講演活動は単価も高く専門性を生かせる副業です。
副業を行う上でも、①で前述した専門分野は重要です。さらに医療の専門分野に加えて、医療政策上、重視されている高齢者や予防医療などの分野での専門性を高めることも検討するとよいでしょう。
4. まとめ
この記事では「医師の給料が下がるのか?」というテーマで、医師を取り巻く今後の環境変化とその対応について解説しました。医師不足の時代が長く続きましたが、1982年に約16万人だった医師数が2018年には約32万人と倍増しています。今後、日本の総人口が減り医師が増え続けると、地域や診療科によっては医師過剰となるのは避けられません。
医師としてのキャリアと人生を考える上で、医師過剰の時代にも必要とされる医師であり続けるにはどうしたらいいのか、考えるきっかけとしていただければ幸いです。
筆者プロフィール
株式会社アイリスプランナー
https://www.irispl.jp/
中小企業診断士/医業経営コンサルタント
奥野 美代子(おくの みよこ)
外資系ブランド27年の実績をもとにした「魅力発信ブランディング」コーチングで院長のビジョン実現とスタッフ育成を行い、採用・集患に悩むことなく地域から選ばれる開業医の魅力発信・ブランディングを支援します。