コラム:事業継承におけるお悩み
コラム クリニック開業ポイント

クリニック(医院)継承の物件に関してみるべきポイント

  • 事業継承におけるお悩み

1. 序文

クリニックを開業するにあたり、既に運営しているクリニックを継承する「継承開業」を選択する先生が増えてきています。継承開業には、親族のクリニックを継承する「親族間継承」と仲介会社などから紹介されたクリニックを継承する「第三者継承」の方法があります。本稿では、「第三者継承」を中心として継承物件の見るべきポイントについて記載をします。また、これは親族間継承の際でも留意点として参考になると思います。

2. クリニック(医院)継承する際に、見るべきポイント

(1)クリニックを見る前に確認するポイント

まずは、内見で現地に行く前に確認をすべき点についてです。

①賃貸借契約書
継承をしても、賃貸オーナーから追い出されては意味がありません。そこで具体的には以下の項目を確認します。

  • 定期借家契約(期日が決まった契約形態)ではないか。またその場合は満期となった際にどのような取り決めとなっているか確認が必要です。
  • 市街化調整区域であったり、建物の関係(特に商業施設の中で開業の場合)で立ち退きの規定があったりしないか。
  • 契約の結び直しが可能か確認をしたか。個人クリニックの継承の場合は、契約について「売り手が解約となり、継承する先生が新たに契約」という形になるためです。また、敷金・礼金・賃料など契約内容は売り手のときと同じで良いかなど確認が必要です。
  • 現在の契約が転貸契約ではないか。転貸契約の場合、大元のオーナーも承諾をしているか確認が必要です。
  • 念のため、オーナーの年齢を確認したか(口約束などがある場合、オーナーが世代交代をして反故になることがあるため)。
  • その他、M&Aコンサルタントや宅建士などの専門家が見て、違和感がある条項はないか。

②平面図
平面図の確認ポイントは以下です。特に個人クリニック譲渡の場合は、行政の取り扱いは「新規の開設」という扱いになり、再度保健所からの検査を受けることになりますので、注意が必要です。

  • 各部屋の面積は記載されているか、それは現在の管轄の保健所のルールに合致しているか、数十年前のクリニックの場合は保健所の指導やルールが変更になっている可能性があります。
  • 配水や配電の図面など、配置が記載されている平面図の他の図面も残っているか。
  • 自身がやろうとしている診療所のコンセプトに合っているか(例:完全予約制のクリニックを考えているのに待合室が広すぎる、など)。

③スタッフ情報
従業員に関して確認すべき主な点は以下です。

  • 引き継ぐ従業員の報酬・勤続年数・年齢などの基本情報を確認し、近隣の給与相場と比較して妥当なのか。
  • 雇用契約書に関して、そもそもしっかりと締結をされているのか、またその内容。
  • 就業規則(退職金規定などの付則も一緒に)などが作成をされているか、またその内容。

④経理(経営)情報
経理・経営に関する情報としては、事前にどこまで書類をもらえるかにもよりますが、以下の情報を確認します。

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  • 確定申告書(法人の場合決算書)を少なくとも3期分入手して、売上・利益を確認します。その際に、青色専従者給与(医療法人であれば役員報酬)・減価償却費・MS法人への取引なども確認をして、継承をした場合にどれくらいの所得になるか。
  • クリニックの経営は基本的に「単価×患者数×日数」によって売上が構成されるため、その項目に沿って毎月の経営数字を確認し、自身が再現可能か、またはもっと増加幅があるか。
  • 算定している施設基準や公費を確認し自身が再現可能か、またはもっと増加幅があるか。

⑤その他

  • 医療法人の譲渡の場合は、社員・役員の重任手続き、都道府県への事業報告書などの手続きが履行されているか、またそれの登記ができているか。

(2)実際にクリニックの見学に行った際に確認するポイント

つぎに、実際に物件の現地を見る際に確認をすべき点についてです。

①視認性、通行量

  • 物件そのものとして「駅からの道はわかりやすいか」「近くに薬局はあるか」「町の印象はどうか」「通行量は多いか」など。

②資産の残存状況、摩耗状況

  • 固定資産台帳に記載をされている資産がしっかりと現地にあるか。
  • 資産の摩耗具合。会計上は耐用年数に沿って減価償却されていますが、実際には使用方法にもよって変わりますので確認をします。

③平面図通りの使用をしている

  • 各部屋の使用方法が提出されている平面図通りになっているか(図面にはあるが取り外してしまっている扉などはないか)。
④順法性

  • カルテや個人情報の管理の仕方、薬品の管理の仕方、院内掲示など、これまで適正に運用されているか。

3. まとめ

本稿では、継承する物件(案件)の選定について、その確認点を中心に記載をしました。医療法人の継承なのか個人クリニックの継承なのかなどによっても重要性、優先度は変わってきますが、いずれにおいても必要となります。またこれらの項目以外にも疑問に思った点は現地で見学する際に積極的に質問をしてから費用のかかる買収監査に進むことをおすすめします。

筆者プロフィール

株式会社G.C FACTORY

https://ma.gcf.co.jp/

代表取締役 金子 隆一

コンサルタントとして、医療機関のM&A、開業、運営支援において累計100件以上の実績を有する。クライアントの問題解決に励むと同時に、都内の大規模在宅支援診療所のバックオフィス業務の設計及び実行責任者を兼任している。