2. クリニック(医院)承継とは?高まる需要
(1)クリニック(医院)承継の種類(親族間・知り合い間・第三者間について)
クリニック(医院)承継は、まずは親族・知り合い・第三者など引き継ぐ先によって分かれます。以下、それぞれ簡単な特徴を記載します。
①親族間
文字通り親戚の医師から承継を行います。あらかじめ承継を見越して準備をできる点、仲介会社の報酬がかからないメリットがあります。相続や贈与にかかる税金などを考慮して、あえて医療法人化したり医療法人の持分を放棄したりと難しいポイントも多いため、税理士への相談は欠かせない方法となります。
②知り合い
勤務先のクリニックなどを承継する場合です。スタッフや患者さんと知り合いであるなど、クリニックの良い点・悪い点を理解しているのがメリットです。一方で、知った仲ではあるので交渉がこじれてしまったときに遺恨がないように、交渉の間に専門家を挟むことも多いです。
③第三者承継
M&A仲介会社から案件を紹介してもらう場合です。多くの案件を比較検討することができます。また破綻になった際も他の2つよりは影響が少ないです。ただし、譲渡対価に応じてM&A仲介会社に成功報酬を支払わなくてはならずコストがかかります。
(2)クリニック(医院)承継のメリット
次に、クリニック(医院)承継におけるメリットについてです。
①開業までにかかる時間を短縮できる点
例えば新規開業では、不動産を探して、内装業者との設計案を作成して、人を採用して、マーケティング手法の選定をして、などと開業前に行うことが多く、順調に進んでも半年間は準備にかかります。
一方でクリニック(医院)承継の場合は案件にもよりますが、開業にかかる多くの工程を省略することが可能です。結果、早い場合ですと2~3カ月で承継も可能ですし、その期間の手間も少ないことが多いです。
②投資予算を抑えられる点
クリニック(医院)承継はある意味「中古」の買い取りになります。よって新規開業における投資予算の中でも比重の大きい、内装や医療機器を引き継ぐことによって大幅な投資予算カットとなる可能性があります。また、ある程度価格が決まっている新規開業と異なり、非常に割安な案件が出てくることもあります。
③早期から患者さんが集まる点
新規開業の場合、当然、周辺住民からの認知度は低く、損益分岐点を超えるまで患者数を有するまでに時間がかかるものとされています。しかしながらクリニック(医院)承継によって患者さんを引き継ぐことにより、早期から損益分岐点を超えることも可能です。
(3)近年需要が高まっている背景
次に、クリニック(医院)承継の重要が高まっている背景として2点記載します。
①M&A仲介会社の参入による市場の活発化
近年、医療業界にもM&A仲介会社が多く参入しています。結果、医療機関においてもM&Aが幅広く認知される様になり、今まで廃業を選択していた医師や、逆にこれまでは新規開業をしていた勤務医の選択肢として認知されるようになりました。
②新規開業に慎重な医師の増加
地域によっては競合となる医療機関が飽和している地域もあり、また新型コロナウイルスの影響からはじまったクリニックの患者数の減少もあります。これらのリスクを背負って新規開業を選択するのではなく、既に患者さんがついている承継を選択する医師が増加しています。