2.開業医の1カ月あたりの収支の相場
クリニックの収支については、毎年、厚生労働省から個人医院と医療法人別に主な診療科の損益状況の統計資料が公開されています。
個人医院では、収支の差額がそのまま院長の年収になります。最新の統計では、月収171万円、年収にすると約2,000万円です。ここから所得税などの税金を払い、借入金を返済した残りが院長の収入になります。
医療法人では、収支差額の利益は個人医院より少ないのですが、院長の給与は経費に含まれます。この利益は、医療法人としての利益になります。
医療法人内科 および 個人内科クリニックの収支/ひと月あたり
出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査) 報告」2021年11月より筆者作成
個人内科クリニック |
医療法人内科クリニック |
内訳 |
単位(万円) |
内訳 |
単位(万円) |
A.収益/月次 |
577 |
収益/月次 |
1,101 |
B.経費/月次 |
406 |
B.経費/月次 |
1,054 |
C.収支/院長収入(A-B) |
171 |
C.収支/利益(A-B) |
47 |
年収(税引前) C ✕ 12ヶ月 |
2,052 |
税引前利益 C ✕ 12ヶ月 |
564 |
(1)1カ月あたりの収入相場
前掲の最新調査では、個人医院の収益は一月あたり平均577万円です。診療コンセプトによって平均診療単価は違いますが、一般内科で5,000円前後、循環器や呼吸器など専門内科で6,000円から8,000円です。577万円の収益は、診療日を月25日とすると1日あたり23万円、患者数で40人強になります。
第23回の医療経済実態調査の結果では、新型コロナ禍の受診控えの影響もあるようで、平均収益が減少していることがわかります。過去数年、個人内科クリニックの平均収益は、7,600万円/年 前後で推移しています。平年の収益相場としては、月平均約600万円が目安です。
医療法人の内科クリニックのひと月あたりの平均収益は、約1,100万円ですが、新型コロナの前は1,350万円*でした。患者数は約80人です。平年の収益相場としては、月平均約1,300万円を目安とするとよいでしょう。
医療法人内科 および 個人内科クリニックの収益/ひと月あたり
出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査) 報告」2021年11月より筆者作成
個人内科クリニック |
医療法人内科クリニック |
内訳 |
単位(万円) |
内訳 |
単位(万円) |
収益/月次 |
577 |
収益/月次 |
1,101 |
外来保険診療報酬 |
510 |
外来保険診療報酬 |
943 |
その他医療収益 |
67 |
その他医療収益 |
125 |
介護収益 |
0 |
介護収益 |
33 |
(2)1カ月あたりの支出相場
クリニックの経費で大きいのは人件費と賃料です。クリニックの黒字経営の目安として、人件費を収益の50%以下、賃料を10%以下になるように事業計画を作ります。
個人クリニックでは、人件費に院長の給与は含みませんが、事業計画上は、院長の給与相当額と借入返済額を加えて収支差額が黒字になるように支出総額を算出します。
人件費については、給与だけでなく社会保険や福利厚生費も考慮しなければなりません。個人医院で常勤スタッフ5名未満の場合は社会保険に加入する義務はありませんが、看護師などの医療スタッフは社会保険完備の病院から転職することが多いので、社会保険未加入の個人医院は採用が難しくなります。最初から社会保険に加入するか、扶養範囲で働きたいパートスタッフを複数雇う方法を検討します。
医療法人内科 および 個人内科クリニックの経費/ひと月あたり
出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査) 報告」2021年11月より筆者作成
医療法人内科クリニック |
個人内科クリニック |
内訳 |
単位(万円) |
内訳 |
単位(万円) |
経費/月次 |
1,054 |
経費/月次 |
406 |
人件費(院長給与含む) |
580 |
人件費(院長給与は含まず) |
153 |
医薬品・材料費 |
162 |
医薬品・材料費 |
109 |
その他経費 |
312 |
その他経費 |
145 |
収入(収益-経費)/月次 |
48 |
収入(収益-経費)/月次 |
171 |
税引前利益 |
574 |
年収(税引前院長の収入) |
2,051 |