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ストレスチェックの集団分析とは
ストレスチェック制度は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的として、労働安全衛生法で定められた仕組みです。常時50人以上の従業員を雇用する事業場では、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。
ただし、ストレスチェックの結果は重要な個人情報であるため、人事担当者であっても自由に閲覧することはできません。
そこで活用できるのが「ストレスチェックの集団分析」です。集団分析とは、ストレスチェックの結果を部門や課、職種などの単位ごとに集計し、集団ごとのストレスの特徴や傾向を把握するための分析方法を指します。
ストレスチェックの集団分析は努力義務であり、必ず実施しなければならないものではありません。とはいえ、職場のストレス状況を客観的に把握し、職場環境の改善につなげるうえで有効な手段とされており、可能な限り実施することが望ましいと言えるでしょう。

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集団分析の目的
ストレスチェックの集団分析の主な目的は、従業員のメンタル不調を未然に防ぎ、職場環境の改善につなげることです。集団ごとの結果を比較することで、高ストレス者が多い部署を早期に把握でき、対策の優先順位も付けやすくなります。
ストレス要因の分析結果によっては、業務量や役割分担、職場のコミュニケーションなど、環境面の見直しが必要となる場合もあります。厚生労働省が示すストレスチェック指針では、集団分析を行った企業は、必要に応じてその集団に属する従業員の心理的負担を軽減するための適切な措置を講じることが求められています。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000082591.pdf)
集団分析を行う者
集団分析の実施主体は企業ですが、実際の分析業務は医師や保健師など、ストレスチェックの実施者が担う必要があります。実施者は集団分析を行ったうえで、個人が特定されない形に加工した結果のみを企業へ提供します。
企業側は、提供された集団分析結果をもとに、人事部門や衛生委員会が中心となって、高ストレスな部署への改善策を検討します。その際、産業医や衛生委員会、人事部門などが連携し、専門家の知見を踏まえながら職場全体で協力して取り組むことが、有効な改善策を導き出すうえで重要です。
集団分析を行うメリット
ストレスチェックの集団分析は、従業員のメンタル不調対策や職場環境の改善に役立つ有効な手段です。ここでは、代表的なメリットを2つ紹介します。
従業員全体のメンタルヘルス不調を早期に把握できる
ストレスチェックの個人結果は、従業員本人の同意がなければ人事担当者でも自由に閲覧できず、個々の結果をもとに組織全体の傾向を把握することは困難です。これに対し、集団分析の結果は個人が特定されない形で集計されるため、従業員の許可を得なくても確認でき、組織全体のメンタルヘルスの動向を把握しやすくなります。
集団分析を行うことで、高ストレス者が多い部署や、ストレスが高まりつつある部門を予兆の段階で捉えやすくなります。分析後は、実施者や連携する医師などから結果に関する助言を受けることで、企業として取るべき対策が明確になり、対応もしやすくなります。
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職場環境の改善に活用できる
集団分析の結果は、職場環境改善の方向性を考えるうえで重要なヒントとなります。分析対象となった集団のストレスの傾向や要因が可視化されることで、職場にどのような問題があるのか、どこから手を付けるべきかを具体的に洗い出すことができます。
ストレスチェック指針では、集団分析の結果を管理監督者向け研修の教材として活用したり、衛生委員会などで職場環境の改善策を検討する材料として用いたりすることが望ましいとされています。ストレスチェックを実施して終わりにせず、結果を積極的に活用し、継続的な職場環境の改善につなげていくことが重要です。
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出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000082591.pdf)
ストレスチェック集団分析の実施ステップ
ストレスチェックの集団分析を効果的に行うには、次の5つのステップを段階的に進めていくことが重要です。

- 集団分析の体制を整える
- ストレスチェックの結果から職場環境を評価する
- 分析結果をもとに職場環境の改善を計画する
- 施策を実施し定期的に進捗を確認する
- 結果を保存・経年比較して継続的に評価する
集団分析の体制を整える
まずは、ストレスチェックの集団分析を実施できる体制を整えましょう。法令や指針に基づき、ストレスチェック制度に関する基本方針を定めたうえで、職場環境改善の目的や進め方を明確にしておくことが大切です。一般的な役割分担の例は次のとおりです。
- 企業(代表取締役や人事部長などの責任者):実施主体として方針を決定する
- 産業医・保健師:集団分析を実施し、専門的な知見に基づき助言を行う
- 人事担当:事務処理の担当および部署間の連絡調整を行う
- 衛生委員会:分析結果を踏まえ、職場環境の改善策を検討する
このように実施体制を整えることで、個人情報保護に配慮しながら、分析結果を迅速に改善策へ反映できる仕組みづくりが可能になります。
ストレスチェックの結果から職場環境を評価する
集団分析を実施したら、その結果をもとに集団ごとのストレス要因を確認します。ストレス要因の特定にあたっては、集団分析の数値だけで判断せず、次のような日常的な情報もあわせて検討すると効果的です。
- 管理監督者が日常の職場管理を通じて把握している状況
- 従業員からの意見・要望の聴取内容
- 産業保健スタッフによる職場巡視や面談などからの所見
ストレスチェックの集団分析結果は、あくまで従業員の主観に基づく平均的な評価を示すものにとどまります。職場巡視やヒアリングといった客観的な情報も組み合わせて総合的に職場環境を評価することで、ストレス要因をより的確に把握しやすくなります。
分析結果をもとに職場環境の改善を計画する
職場環境の評価結果を踏まえ、企業や衛生委員会、各部署の管理監督者が中心となって、職場環境の改善計画を策定します。改善の目的や優先順位を明確にし、誰が・いつまでに・何を行うかを具体化することが大切です。
計画づくりの際は、社内外の良好事例を参考にしたり、検討段階から従業員が参加できる場を設けたりすると、現場感のある施策になりやすく、実行段階での納得感も高まります。
改善計画は、次のような具体的な施策案まで落とし込みましょう。
- 業務量の調整
- 仕事の裁量権・自由度の向上
- 上司支援・同僚支援の強化
- 職場内コミュニケーションの改善
- 作業内容の転換や就業場所の変更
施策を実施し定期的に進捗を確認する
改善計画を策定したら、実際の施策実行へと進みます。その際、現場任せにせず、衛生委員会や産業保健スタッフ、必要に応じて外部機関などがフォローできる体制を整えておくことが望ましいです。
あわせて、施策の進捗状況を定期的に確認する仕組みも重要です。対策の効果を評価する時期や、必要に応じて計画を見直す時期をあらかじめ決めておき、計画どおりに実行されているか、運用上の課題がないかをチェックします。
進捗確認や効果検証は、3〜6か月ごとを目安に行い、衛生委員会や部署内の定例会議などで結果を報告・共有しましょう。PDCAサイクルを回し続けることで、継続的な職場環境改善が期待できるでしょう。
結果を保存・経年比較して継続的に評価する
集団分析の結果は、現在の状況把握だけでなく、職場のストレス状況を長期的な視点から捉えるためにも有用です。
集団分析の結果は、概ね5年間保存することが望ましいとされています。結果を蓄積しておくことで、経年比較(過去結果との比較)が可能になり、ストレス状況の変化や、実施した改善施策の効果を客観的に検証しやすくなります。
ストレスチェックの集団分析を、毎回できるだけ同じ方法で継続的に行い、「計画・実行・評価・改善」のPDCAサイクルを回し続けることで、組織全体のメンタルヘルス対策を着実に強化していくことにつながることでしょう。
ストレスチェック結果の集団分析ツール
ストレスチェック結果の集団分析では、国が標準的な分析方法として推奨している「職業性ストレス簡易調査票」と「仕事のストレス判定図」がよく用いられます。これらを組み合わせて活用することで、職場のストレス状況を体系的に把握できます。
職業性ストレス簡易調査票
職業性ストレス簡易調査票は、厚生労働省がストレスチェック用の標準的な質問票として推奨しているツールです。57項目の標準版と、23項目の簡略版の2種類があり、目的や負担感に応じて使い分けられます。
この調査票を用いることで、次のようなストレス要因や状態を可視化できます。
- 仕事の量的・質的負担
- 仕事のコントロール度(裁量権・自由度)
- 上司・同僚からの支援状況
- 心身のストレス反応(疲労感、不安感、抑うつ感など)
職業性ストレス簡易調査票で得られた回答(数値)をもとに、集団ごとの平均値などを算出し、その結果を次に紹介する「仕事のストレス判定図」で分析するのが一般的な流れです。
仕事のストレス判定図
仕事のストレス判定図は、職業性ストレス簡易調査票の結果をもとに集団分析を行う際に用いられる、代表的な分析ツールです。部や課など職場内の一定の集団を対象に、仕事上のストレス要因の強さと、それが従業員の健康に与える影響の大きさを評価します。
仕事のストレス判定図は、次の2つの図から構成されています。

出典:厚生労働省ホームページ(https://stresscheck.mhlw.go.jp/download/201903/hantei201903.pdf)
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量-コントロール判定図
仕事の量的負担と仕事のコントロール(裁量権・自由度)のバランスから、ストレスの度合いを示す図です。仕事量が多く、かつ自分で調整できる範囲が狭いほどストレスが生じやすく、健康リスクが高い状態と判定されます。 -
職場の支援判定図
上司と同僚からの支援状況とストレスの関係を示す図です。上司・同僚双方からの支援が乏しいほどストレスが高いと判断され、反対に支援が手厚いほどストレスは軽減されやすいと考えられます。
それぞれの図上に、集団ごとの平均点をプロットし、全国平均などと比較することで、その集団がどのようなストレス特徴を持っているかを一目で把握できます。
ストレスチェックの集団分析を行う際の注意点
ストレスチェックの集団分析を行う際は、あらかじめ目的を明確にしたうえで、個人情報の取り扱いに十分配慮することが大切です。とくに、以下の3点を意識して進めましょう。
- 集団分析の目的を明確にする
- 少人数での分析とその取り扱い
- 結果の共有と社内ルールの整備
集団分析の目的を明確にする
ストレスチェックの集団分析は、結果の数字を見るだけでは十分に活用できているとは言えません。実施前に「何のために集団分析を行うのか」という目的を明らかにし、経営層や人事、管理職など社内で共有しておくことが重要です。分析結果を出発点として、職場の課題を洗い出し、環境改善の具体的な施策につなげていきましょう。
職場環境の改善は、従業員のメンタルヘルス不調の予防だけでなく、働きやすさの向上や生産性の向上にもつながります。企業経営の重要な取り組みの一つとして位置づけ、集団分析の結果を積極的に活用していく姿勢が求められます。
少人数での分析とその取り扱い
集団分析の対象人数が少ない場合、結果から個人が特定されてしまうおそれがあります。分析対象が10人を下回る場合は、対象となるすべての従業員の同意を得ない限り、企業は集団分析の実施者から結果の提供を受けられません。
ただし、仕事のストレス判定図を用いるなど、個人が特定されない手法で集団分析を行う場合は、10人未満であっても従業員の同意なしに分析結果の提供を受けることができます。
結果の共有と社内ルールの整備
集団分析の結果は、分析対象となった集団の管理者にとって、自身の評価にも直結し得るセンシティブな情報です。特定の部署で高ストレスの傾向が示された場合、部署責任者の組織運営に問題があるとみなされるおそれもあります。
そのため、分析結果の共有範囲や取り扱い方法については、あらかじめルールを定めておくことが重要です。衛生委員会などで十分に審議し、職場での扱い方を社内規程として明文化しておきましょう。
まとめ
集団分析の結果は組織のストレス傾向がわかり、職場環境改善の重要な手がかりになる重要な情報です。
しかし、課題の洗い出しや有効な改善策の提案・実行には専門的な知見が欠かせません。企業内の人的リソースだけでは対応しきれないケースも多いでしょう。
ウィーメックスの集団分析報告会サービスは、経験豊富なスタッフがレポートの見方や報告会の進め方、対策検討をサポートいたします。心理職やメンタルヘルス関連の有資格者が外部の視点から集団分析結果を検討するため、客観的で実効性のある改善策のご提案が可能です。
まずは以下のページよりお気軽にお問い合わせください。
集団分析報告会(Wemex ストレスチェック)