目次
アルバイト・パートも健康診断が必要な条件
アルバイト・パート従業員であっても、「常時使用する労働者」に該当する場合は、健康診断を受けさせる必要があります。「常時使用する労働者」とは、一般に次の2点を満たす従業員を指します。

1. 1年以上の長さで雇用契約をしているか、または、雇用期間を全く定めていないか、あるいは既に1年以上引き続いて雇用した実績があること。
2. 一週間あたりの労働時間数が通常の労働者の4分の3以上であること。
関連記事:健康診断は会社の義務!目的や内容・罰則について解説
一般健康診断が必要になる条件
一般健康診断のうち、「雇入れ時の健診」と「年1回の定期健診」は、実施が義務付けられている基本的な健康診断です。上記の条件を満たすアルバイト・パート従業員も対象となります。
一方、雇用期間が2か月以内の短期雇用や、週の所定労働時間が正社員の4分の3未満の場合は、一般健康診断の義務はありません。ただし、週の所定労働時間が正社員の1/2以上4分の3未満の場合は、義務ではないものの、健康管理の観点から受診することが望ましいとされています。
特定業務従事者健診が必要になる条件
労働安全衛生規則で定められた身体的負担の大きい「特定業務」に従事する場合は、配置換え時および6か月ごとに健診が必要です。対象となるのは以下のような業務です。
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その 他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化 炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気 又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
これらに常時従事するアルバイト・パート従業員も、該当労働者として受診させる必要があります。
特殊健康診断が必要になる条件
特殊健康診断は、法令で定められた有害業務に従事する従業員を対象とした健診です。対象業務には、粉じん作業、高圧室内や潜水業務、エックス線などの電離放射線業務、除染作業、鉛など有害物質を扱う業務などがあります。
この健診は、有害業務による健康影響を早期に把握する目的で行われ、一般健康診断とは異なる位置づけです。従事者には、雇入れ時・配置換え時に加え、法令で定められた頻度(多くは6か月・一部は1年ごと)で実施する義務があります。
一般健康診断の対象外となるアルバイト・パート従業員でも、有害業務に従事している場合は特殊健康診断の対象となります。
関連記事:【特殊健康診断】対象者は?一般健診との違いと実施義務を解説
出典:厚生労働省ホームページ(https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/var/rev0/0120/0350/201766134629.pdf)
厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf)
アルバイト・パートの健康診断の費用負担
アルバイト・パート従業員の健康診断も、基本的な費用負担の考え方は一般の従業員と同じで、原則として企業が負担します。ここでは、費用負担の原則と交通費・賃金の取り扱いを解説します。
健康診断の費用は企業が負担すべきもの
法定健診の対象となるアルバイト・パート従業員については、会社が全額負担すべきものとされています。労働安全衛生法により、事業者は健康診断を実施する責任を負うため、その費用を従業員に負担させることはできません。
ただし、本人の希望によるオプション検査や、企業が指定した医療機関以外で任意に受診した場合は、その費用を自己負担とすることが可能です。その場合も、法定健診分との区別や費用処理のルールを社内で明確にしておきましょう。
健康診断時の賃金や交通費の取り扱い
一般健康診断の受診は従業員の義務ですが、業務遂行との直接的な関連性はありません。そのため、受診に要する時間に対する賃金の支払いは、労使間の協議によって定めるべき事項です。
ただし、従業員が円滑に受診できるように、受診時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいとされています。この扱いは、法定健診の対象となるアルバイト・パート従業員にも同様に推奨されます。
交通費についても法令上の明文の義務はなく、会社負担とするかどうかは、従業員区分(正社員・アルバイト・パート従業員等)を問わず、各社の就業規則や労使協議で定める扱いとするのが適切です。
特殊健康診断は、有害業務に従事する従業員の安全確保のため「事業の遂行に当然必要なもの」と位置づけられ、受診時間は原則として労働時間に該当します。そのため、所定外の時間に実施する場合は割増賃金の支払いが必要となり、医療機関への移動に要する交通費も会社が負担するのが適切と解されています。
参考:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/2.html)
アルバイト・パートも健康診断を促進するメリット
健康診断の推進は、法令遵守や罰則回避にとどまらず、企業にさまざまなメリットをもたらします。実際に、法定義務のないアルバイト・パート従業員にも費用を負担して受診を推奨する企業もあります。
健康リスクを把握して健康経営に活かせる
健康診断を積極的に行うことで、アルバイト・パート従業員を含む従業員の健康状態を把握しやすくなり、職場全体の健康管理や健康経営®の推進に役立ちます。
健康経営とは、従業員の健康を経営課題として捉え、疾病リスクを早期に発見・対応し、長く健康に働ける環境を整備する考え方です。生活習慣病やメンタル不調の早期発見は、重症化防止や離職防止につながり、生産性や定着率の向上にも寄与します。
また、「健康経営優良法人認定制度」では受診率100%が要件の一つであり、この対象にはアルバイト・パート従業員も含まれます。
関連記事:健康経営とは?注目される背景やメリットと課題、今後の展望を解説
採用力を強化できる
法的義務のないアルバイト・パート従業員にも健康診断を実施することは、採用面でも大きなアピールになります。求人広告で「アルバイトも企業負担で健康診断あり」と打ち出せば、福利厚生の充実を示せるほか、企業の信頼性向上にもつながっていきます。
従業員の健康を重視する姿勢を示すことで、採用コスト削減や優秀な人材の確保といった効果も期待できるでしょう。
アルバイト・パートへの健康診断の実施方法
アルバイト・パート従業員の中には、自分に健康診断の受診義務がないと考える人もいます。スムーズに受診してもらうためには、事前準備と丁寧な案内が重要です。以下の手順で進めましょう。
1.社内ルールの整備
健康診断を業務として実施するには、社内ルールの整備が必要です。対象者に受診義務があること、正当な理由なく受診を拒否した場合の対応について、就業規則に明記しておきましょう。
法律上義務のないアルバイト・パート従業員を対象に含めるかどうかも、この段階で検討しておくと、その後の対象者確認がスムーズです。
2.対象者の精査
社内ルールで定めた基準に基づき受診対象者を確認します。雇用期間が1年未満、または労働時間が通常の4分の3未満など、義務の対象外となる従業員を任意で含めた場合は、漏れがないよう注意します。
3.受診の案内
対象者が決まったら、受診日や当日の流れを案内します。アルバイト・パート従業員は勤務時間が多様なため、複数の候補日を設定したり、健診車を手配するなど柔軟な対応を行いましょう。 健診場所や持ち物などは、文書で分かりやすくまとめて配布します。
アルバイトの健康診断を適切に運用するための企業の注意点
アルバイト・パート従業員の健康診断を実施する際に、企業が押さえておくべき注意点と対応ポイントを2つ紹介します。
アルバイトの未受診リスクに適切に対応する
アルバイト・パート従業員の中には、受診義務があるにもかかわらず健康診断を拒否するケースがあります。まずは受診の必要性と、正当な理由なく拒否を続けた場合は懲戒処分の対象となる可能性がある点を丁寧に説明し、受診を促しましょう。
受診しやすい環境を整える工夫(柔軟な日時設定、受診場所の配慮など)も重要です。それでも受診しない場合は、企業としての安全配慮義務違反を問われないよう、説明や対応の記録を残しておくことが大切です。
関連記事:受診勧奨とは?重要性や実施基準やポイントを紹介
アルバイトの勤務実態をふまえて健診対象を正しく判断する
アルバイト・パート従業員は働き方が多様で、健康診断の対象に該当するか判断が難しい場合があります。代表的なケースを以下に示します。
-
シフト制の場合(変形労働時間制)
月ごとの労働時間が変動する場合は、次の計算式で求めた1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上かを判断します。
(対象期間の総労働時間)÷(対象期間の暦日数 ÷ 7) -
ダブルワークの場合
他社での勤務時間は合算せず、自社の所定労働時間のみで判断します。 -
学生アルバイトの場合
受診義務の対象となる場合は健康診断を受けさせる必要がありますが、学校の健診結果(3か月以内)で代用することも可能です。
判断に迷うときは、労働基準監督署や社会保険労務士など専門家へ相談しましょう。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/09_tsutatsu.pdf)
まとめ
アルバイトやパート従業員の健康診断は、対象者の選定から日程調整、結果管理まで、正社員以上に手間のかかる業務となります。
法令を遵守し、業務ミスを防ぐためには、外部の専門サービスを活用することが効果的です。ウィーメックスの健診代行サービスでは、全国の医療機関との契約、予約手配、結果データの一元管理までをワンストップで対応しています。
業務負荷を軽減し、確実な健康診断の実施を実現するために、ぜひ導入をご検討ください。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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