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企業には健康診断の実施義務がある
企業には労働安全衛生法に基づき、従業員に対して健康診断を実施する義務があり、その費用は企業が負担します。
定期健康診断は通常年1回の実施が義務付けられており、これに加えて、一定の有害業務に従事する労働者に対する特殊健康診断や、労働安全衛生規則で定められた特定業務従事者健康診断については、年2回(おおむね6か月以内ごと1回)の実施が必要とされる場合があります。
起因の健康障害の早期発見において重要な役割を担っています。

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健康診断の実施対象
企業で働く多くの従業員は健康診断の実施対象ですが、すべての従業員が対象となるわけではありません。ここでは、健康診断を実施すべき従業員の範囲を整理して確認します。
正社員
正社員は「雇用期間の定めがなく、常時使用する従業員」にあたるため、企業には健康診断を実施する義務があります。役職の有無や労働時間の違いにかかわらず、正社員であればすべてが実施対象です。
パートタイム労働者・アルバイト・有期契約社員
パートタイム労働者・アルバイト・有期契約社員などの非正規雇用者についても、「常時使用する従業員」に該当する場合は健康診断の実施が必要です。該当するかどうかは主に週の所定労働時間と契約期間によって判断します。
●一般健康診断(雇入時・定期健診)
週の所定労働時間が正社員の4分の3以上で、契約期間が無期契約または1年以上(更新により1年以上となる見込みを含む)の場合、非正規雇用者であっても一般健康診断の実施が義務となります。
週の所定労働時間が正社員の2分の1以上4分の3未満の場合は、法的義務ではありませんが、企業として実施することが望ましいとされています。
●特定業務従事者健康診断
週の所定労働時間が正社員の4分の3以上であれば、契約期間が6か月以上1年未満であっても特定業務従事者健康診断(6か月以内ごとに1回)の実施が必要です。
契約更新により在籍期間が6か月を超える場合も同様に、特定業務に従事し週の所定労働時間が4分の3以上であれば健康診断の実施義務が生じます。
●特殊健康診断
パートタイム労働者・アルバイト・有期契約社員であっても、有害業務に常時従事している場合には、週所定労働時間に関係なく実施する必要があります。
派遣社員
派遣社員については、雇用関係は派遣先企業ではなく派遣元企業にあります。そのため、健康診断の実施義務は派遣元企業にあります。ただし、特殊健康診断に該当する業務を担当する場合は例外で、派遣先企業が実施義務を負う点に注意が必要です。
役員
役員は原則として健康診断の対象外であり、企業が費用を負担して実施する必要はありません。ただし、実際に労働者としての業務を行っている場合は例外です。たとえば、工場長や支店長などの職務を兼ねる役員は、従業員と同様に健康診断の実施対象となります。
企業が費用負担する範囲
企業に費用負担が義務づけられているのは、一般健康診断の法定項目と特殊健康診断とその二次検査です。以下でそれぞれの内容を確認しましょう。
一般健康診断(法定項目)
法定項目とは、労働安全衛生法で実施が義務づけられている健診項目です。具体的な内容は健康診断の種類によって異なります。
二次検査については、法定項目に含まれるものであっても企業に費用負担の義務はありません。ただし、企業には安全配慮義務があるため、従業員が受診しやすいよう配慮することが望まれます。
また、入社前健康診断の費用について法的な定めはありませんが、安全配慮義務の観点から、企業が負担することが望ましいといえます。
特殊健康診断の二次検査
特殊健康診断は、有害業務に従事する従業員を対象とするもので、一般健診とは扱いが異なります。結果が「要再検査」または「要精密検査」となった場合、二次検査の受診が必要です。この費用は企業が負担する義務があります。
特殊健康診断の対象業務は、健康障害のリスクや労災発生の可能性が高いため、企業が二次検査費用を負担することで、健康障害の早期発見と労災防止につなげることができます。
関連記事:【特殊健康診断】対象者は?一般健診との違いと実施義務を解説
健康診断受診中の給与の扱い

健康診断受診中の給与の扱いは、健康診断の種類によって異なります。ここでは、一般健康診断と特殊健康診断に分けて確認しましょう。
一般健康診断
一般健康診断は業務と直接的な関係がないため、受診時間は労働時間として扱われません。したがって、受診中の賃金の有無は労使間の協議で定める必要があります。協議の結果、賃金を支払わないと定めても問題はありません。
ただし、賃金が発生しない場合、受診をためらう従業員も想定されます。受診率を向上させるためには、受診時間を賃金支払いの対象とすることが望ましいでしょう。
特殊健康診断
特殊健康診断は、業務による健康障害を防止する目的で実施されるため、受診時間は労働時間として扱われます。このため、企業には給与を支払う義務が生じます。
また、実施のタイミングによっては、時間外労働手当や休日労働手当の支払いが必要となる場合もあります。
健康診断の経費処理
企業が健康診断を実施し費用を負担した場合、その費用を適切に経費処理する必要があります。ここでは、仕訳方法と注意点を確認しましょう。
仕訳の方法
法定健康診断や一定の条件を満たす任意健診については、福利厚生費として処理することが一般的です。企業が負担する従業員の健康診断費用は、福利厚生費として計上し、貸方は現金または預金となります。
一方で、役員のみを対象とした健康診断など、福利厚生費として認められないケースでは、役員報酬や給与として処理する必要があります。
経費処理上の注意点
健康診断費用は医療費ではないため、消費税の課税対象となります。また、費用は企業が健診機関へ直接支払うことが原則です。従業員に立て替え払いをさせて後から返金する方法は認められません。立て替え払いを行った場合、福利厚生費として計上できなくなるため注意が必要です。
関連記事:健康診断を福利厚生費で計上する条件と方法|人間ドックの費用負担は?
健康診断費用に関するFAQ
健康診断費用について、人事担当者が押さえておきたい代表的な質問と回答をまとめました。
健康診断を受診しなかった従業員の費用の扱いは?
受診しなかった従業員分の健康診断費用は、企業に負担義務はありません。ただし、企業には受診しやすい環境を整備し、受診を促す責任があります。健康診断の実施が企業の義務であること、従業員の健康維持に不可欠であることを説明し、受診を働きかけましょう。
健康診断受診中の賃金は企業が支払う義務がありますか?
一般健康診断の場合、企業に支払い義務はありません。ただし、円滑な受診を促す観点からは、受診に要した時間の賃金を支払うことが望ましいとされています。一方、特殊健康診断については、受診が業務の一部とみなされるため、支払い義務が生じます。
二次検査の費用の扱いは?
一般健康診断の二次検査費用は、原則として従業員の自己負担となります。企業に負担義務はありませんが、任意で補助制度を設けることは可能です。一方、特殊健康診断に付随する再検査などは事業者の義務であるため、その費用は企業が負担しなければなりません。
退職予定の従業員の健康診断費用の扱いは?
退職予定であっても、受診日(または基準日)に在籍していれば、企業負担で受診させる必要があります。ただし、受診日が退職後である場合や、基準日時点で既に退職している場合には、企業に費用負担の義務はありません。
オプション検査の費用負担は?
産業医が就業可否の判断に再検査を求めた場合や、会社が受診を指定した際の費用は会社が負担すべきです。一方、法定外のオプション検査等に支払い義務はありませんが、健康管理の促進や受診率向上を目的とするならば、会社負担とすることが望ましいでしょう。
まとめ
健康診断費用は、正社員だけでなく、一定の条件を満たす非正規雇用の従業員についても企業が負担する必要があります。二次検査の費用負担義務があるのは、特殊健康診断のみです。企業が健康診断費用を負担した場合、一定条件を満たすことで福利厚生費として計上できます。
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