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福利厚生費とは
福利厚生費とは、企業が従業員のために賃金とは別に支出する費用のことを指します。一部の従業員だけでなく、すべての従業員を対象として支出されるものが対象です。従業員のワークライフバランスやエンゲージメント向上を目的とした経費であり、企業にとって重要な役割を担っています。
福利厚生費は大きく分けて、「法定福利厚生費」と「法定外福利厚生費」の2種類があります。

法定福利厚生費
法定福利厚生費とは、法律により企業の負担が義務づけられている福利厚生費を指します。主に6つの種類があり、事業主と従業員で負担するものと、事業主が全額を負担するものに分かれます。
<事業主と従業員で負担>
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
<事業主が全額を負担>
- 労災保険料
- 子ども・子育て拠出金
これらは法律で明確に定義されているため、該当するかどうかで迷うことはないでしょう。金額も、標準報酬月額や賃金に基づいて計算される仕組みが定められています。
法定外福利厚生費
法定外福利厚生費とは、企業が任意で従業員のために支出する費用のことです。たとえば、社員食堂や社宅、保育所、福利厚生施設の運営・維持にかかる費用などがこれに該当します。
また、健康診断は企業に実施義務がありますが、費用負担に関する法的な規定はありません。そのため、企業が負担する健康診断費用は、通常「法定外福利厚生費」として扱われます。
健康診断費用を福利厚生費で計上できる条件
企業が健康診断費用を福利厚生費として計上するためには、一定の要件を満たしている必要があります。
全従業員に対して平等に実施
健康診断費用を福利厚生費として計上するためには、全従業員を対象に平等に実施している必要があります。特定の役職や部署、職種の従業員だけを対象としている場合は、福利厚生費としては扱えません。勤続年数などで対象者を限定している場合や、一部の役員だけに高額な検査を実施している場合も、福利厚生費として認められない可能性があるため注意が必要です。
ただし、合理的な理由がある場合に内容に差を設けることは問題ありません。たとえば、年齢に応じて検査項目を追加している場合は、福利厚生費として計上できます。
常識の範囲内の内容・金額
健康診断は病気やけがの治療とは異なり、自由診療に分類されます。そのため、医療機関や健診機関によって料金が異なりますが、基本的にはどの医療機関を選んでも問題ありません。
ただし、料金が極端に高い場合は、福利厚生費として認められない可能性があります。明確な基準は設けられていませんが、従業員一人あたり10,000~15,000円程度が目安とされています。
企業が費用を直接払いしている
企業が健康診断費用を福利厚生費として計上するためには、企業が負担し、健診機関に対して直接支払う必要があります。企業が負担せず、従業員が自己負担している場合は、福利厚生費としては扱えません。
また、従業員が一時的に立て替え払いを行い、後日企業が返金する形式も、福利厚生費としては認められません。
健康診断費用を福利厚生費で計上する方法
健康診断費用を福利厚生費として計上するには、実施前に次の手順で事前準備を進めておく必要があります。
受診状況と健康リスクを把握
まず、これまでの健康診断の受診状況を確認しておきましょう。自社全体の受診率を算出するとともに、部署や年齢層などの属性ごとに受診傾向を分析し、組織全体の課題を把握することが重要です。
また、過去の健康診断結果を統計的に分析することで、従業員の健康リスクの傾向も見えてきます。企業全体の健康状態の推移や、特定の集団における健康リスクの偏りなどを把握しておくことは、適切な健診プランの策定や事後措置の検討に役立ちます。
必要な検査項目・オプションの設計
健康診断の実施は企業に義務づけられており、必須の検査項目については法律で明確に規定されています。検査項目を設定する際は、実施が義務づけられている項目を必ず含めるようにしましょう。
そのうえで、従業員の希望や過去の結果傾向をふまえてオプション項目を追加することも可能です。たとえば、がん検診や肺機能検査などは法定項目ではありませんが、オプションとして設定されるケースが多く見られます。
就業規則・運用フロー設計
定期健康診断については、企業には実施義務が、従業員には受診義務が課せられてる一方で、実際の受診率は100%に達していない企業も少なくありません。就業規則への明記や、受診を促すための働きかけが重要となります。受診率を高める方法は下記記事で解説しています。
健康診断費用でも福利厚生費で計上できないケース

健康診断費用であっても、条件によっては福利厚生費として計上できない場合があります。では、どのようなケースで福利厚生費の対象外となるのか見ていきましょう。
従業員の家族の健康診断
す。配偶者を扶養している従業員にとってはありがたい制度ですが、福利厚生費として計上できるのは従業員本人分のみです。家族の健康診断費用は福利厚生費には該当しないため、経費処理の際には注意が必要です。
なお、企業が家族分の健康診断費用を負担した場合は、その金額を従業員の「給与」として扱う必要があります。
役員のみ対象の健康診断
役員に対して健康診断を実施し、その費用を企業が負担する場合にも注意が必要です。役員が一般社員と同じ内容の健康診断を受けている場合は、福利厚生費として計上しても問題ありません。
一方で、役員のみを対象とした健康診断を実施している場合や、役員だけ検査項目を多く設定している場合は、その費用を福利厚生費として処理することはできません。
人間ドック費用は福利厚生費に計上できる?
企業によっては、従業員に人間ドックを実施している場合があります。人間ドックについても、対象者を限定した場合、福利厚生費として認められません。ただし、一定の年齢以上を対象とするなど条件を設定することは可能です。もちろん、受診した従業員全員の費用を企業が負担していることが前提となります。
ただし、費用は常識の範囲内である必要があります。明確な金額基準はありませんが、おおむね数万円程度までが目安と考えておくと良いでしょう。
健康診断を福利厚生として効果を高めるポイント
健康診断を実施するだけではなく、福利厚生としての効果を高める工夫を行うことで、企業全体により大きなメリットをもたらせます。では、どのような取り組みが効果的なのか見ていきましょう。
健康診断結果を健康経営に活用
健康診断の結果は、従業員の健康管理に役立つ重要な情報です。結果を分析することで、従業員全体の健康状態や傾向を把握でき、「健康経営®」の推進にも活かせます。現状の課題を明らかにしたうえで施策を立案すれば、従業員の健康改善やモチベーション向上にもつなげられます。
関連記事:健康経営とは?注目される背景やメリットと課題、今後の展望を解説
組織文化として定着
健康診断の重要性を従業員に理解してもらうためには、制度としてではなく「組織文化」として根付かせることが大切です。そのためには、まず経営層の理解と支援を得ることが欠かせません。
経営層が健康経営の意義を理解していれば、予算や人員配置などの面で実効性が高まり、全社的な取り組みとして推進しやすくなります。経営層から積極的に健康診断の重要性を発信してもらうと、従業員の意識も向上します。
健康診断の運用負荷を減らす外部サービスの活用
健康診断の運用では、対象者への案内や予約管理など多くの業務が発生し、人事担当者の負担が大きくなりがちです。多くの担当者は他の業務も兼務しているため、繁忙期には残業が増えてしまうこともあります。
こうした場合には、外部サービスを活用することで負担を軽減できます。運用業務を効率化できれば、担当者の残業時間削減や、他の重要業務へのリソース配分にもつながるでしょう。
まとめ
健康診断を福利厚生として適切に運用することは、法令遵守にとどまらず、従業員の健康維持や健康経営の観点からも非常に重要な取り組みです。その一方で、対象者の選定からスケジュール調整、健診結果の管理、そして精算業務にいたるまで、健康診断に関連する事務作業は多岐にわたり、担当部門にとっては非常に負担の大きい業務になりがちです。
こうした課題に対し、外部のリソースを活用することで、担当部門の負担を抑えつつ、制度を安定して運用することが可能です。ウィーメックスでは、企業向けに健診代行サービスを提供しています。健康診断業務の多くを代行できるため、人事担当者の負担軽減に役立ちます。精算業務にも対応していますので、この機会にぜひ導入をご検討ください。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。