ストレスチェックの活用方法|結果を職場環境改善につなげるポイントを解説
ストレスチェックは、従業員のストレス状況を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための検査です。労働安全衛生法の改正により、2028年4月からは全事業所で年1回の実施が義務化されます。ストレスチェックの主な目的は従業員のメンタルヘルス不調の防止ですが、結果を上手に活用すれば、組織課題の可視化や職場環境改善、従業員が持続的に力を発揮できる組織づくりにつながります。企業競争力を強化するためにも、実施だけで終わらせず、上手に活用することが重要です。本記事では、ストレスチェックの具体的な活用方法やメリット、実務上のポイントを解説します。
※本内容は公開日時点の情報です
目次
メンタルヘルス対策におけるストレスチェックの活用状況
厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.2%です。取組内容では「ストレスチェックの実施」が65.3%と最も多くなっています。
また、ストレスチェックを実施した事業所のうち、集団分析を行った割合は75.4%でした。このうち、分析結果を活用した事業所の割合は76.8%にのぼります。具体的な活用内容(複数回答)は次のとおりです。
- 残業時間削減、休暇取得に向けた取り組み:48.5%
- 相談窓口の設置:41.2%
- 上司・同僚に支援を求めやすい環境の整備:36.7%
- 業務配分の見直し:34.8%
- 人員体制・組織の見直し:33.8%
- 衛生委員会又は安全衛生委員会での審議:30.5%
- 管理監督者向け又は従業員向け研修の実施:22.6%
- 職場の物理的環境の見直し:19.6%
- 従業員参加型の職場環境改善、ワークショップの実施:9.4%
- その他:5.7%
- 特に活用していない:19.5%
参考:令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況|厚生労働省
ストレスチェックを活用するメリット・効果
ストレスチェックは、単なる法律上の義務として「やって終わり」にせず、組織の課題を可視化する経営資源として積極的に活用することが大切です。ストレスチェックを活用する主なメリットや効果を解説します。
メンタルヘルス不調の未然防止・早期発見による健康リスク低減
ストレスチェックの主な目的は、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」です。
厚生労働省の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」によると、従業員がメンタルヘルス不調に陥ると、休職・病休期間は平均で約3か月に及びます。復職後に再び病休となる割合も約半数に達しており、人材の損失や経営上の大きなリスクにつながります。
厚生労働省が実施した効果検証事業では、ストレスチェックを受けた従業員の約7割が「自身のストレスがわかったこと」が有効だったと回答しました。ストレスチェックの実施は従業員自身のストレスへの気付きを促し、セルフケアの促進を通じて健康リスクの低減につながります。
仕事のストレス判定図で集団分析を実施すれば、分析対象集団にどの程度の健康リスクがあるかの判定も可能です。健康リスクを視覚的に把握・分析できるため、対策を講じやすくなり、リスクの低減に役立つでしょう。
参考:小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
働きやすい職場環境づくりによる生産性向上・離職率低下
ストレスチェックの集団分析は、職場環境の改善に活用できます。集団分析によって職場のストレス傾向や健康課題を把握できれば、改善策の検討・実行によって働きやすい職場環境が整います。
従業員が仕事に意欲的に取り組み、企業として生産性を向上させるためには、従業員が働きやすいと感じられる職場環境を整えることが重要です。職場環境がよければ、従業員の日々の仕事に対するモチベーションや集中力の向上につながり、組織全体の生産性向上にも寄与すると考えられています。
また、ストレスチェックを活用した職場環境の改善は、離職率の低下を図るうえでも効果的です。従業員が働きやすいと感じればエンゲージメントが向上し、離職率の低下が期待できます。長く勤める人が増えることで、中長期的な視点での人材育成が可能となるでしょう。
ストレスチェック結果の具体的な活用方法
ストレスチェックの結果は、組織全体の課題を可視化する組織診断と、従業員の自発的なセルフケアを促す予防制度として活用できます。具体的な活用方法を組織向けと従業員向けに分けて紹介します。
組織課題の把握・職場環境改善に活用する
ストレスチェックを集団分析で活用したり、他の人事・労務のデータと合わせて活用したりすると、職場や集団ごとのストレス傾向を客観的に把握できます。組織向けの具体的な活用方法を3つ紹介します。
部署・職種などの集団単位で課題を把握する
ストレスチェックの結果を部署や職種、職位・職階などの集団単位で分析し、課題を把握する方法です。集団ごとに仕事の負担やコントロール(裁量)、上司・同僚の支援などの傾向を「仕事のストレス判定図」などで可視化できます。
分析結果から課題のある職場や要因が見つかったら、改善策を検討しましょう。ストレス原因に応じた改善策の例は次のとおりです。
仕事量の多さがストレス原因の場合
- 業務の棚卸しを行い、重複業務の整理や不要業務の廃止を進める
- 属人化している業務を見える化し、分担・共有によって1人の負担を軽減する
上司や同僚からの支援の低さがストレス原因の場合
- 1on1ミーティングを導入し、上司・部下間の意思疎通を促す
- チーム内で業務状況を共有し、フォロー体制や互いに助け合う雰囲気を醸成する
なお、少人数の職場で集団分析を実施する際は、個人が特定されないよう配慮しましょう。
関連記事:職場環境の改善を成功させるポイントは?進め方やアイデア、メリットを解説
他の人事・労務データと掛け合わせて課題の背景を分析する
ストレスチェックの結果を、残業時間や休職、欠勤、離職率、有給取得状況、従業員サーベイなど、他の人事・労務データと掛け合わせるとより詳しく課題を分析できます。
例えば、ストレスチェックとあわせて勤怠データを分析し、長時間労働や離職が増えていないかを確認します。数値の背景にある人事課題が浮き彫りになり、より的確な改善策を検討しやすくなるでしょう。人材定着や人員配置、組織再編後の課題把握など、組み合わせ次第でさまざまな人事・組織課題の改善に活用可能です。
ストレスチェック指針でも、集団分析の結果に加え、日常の職場管理や意見聴取で得られた情報などを勘案し、職場環境を評価することが望ましいとされています。なお、人事・労務データを取り扱う際は、あらかじめ利用目的や閲覧できる従業員の範囲を定めておきましょう。
関連記事:ストレスチェックで離職を防ぐ!リスクを早期発見する方法と予防策
経年比較から組織状態の変化を把握する
過去のストレスチェック結果と比較して、部署や職種ごとのストレス状況の変化を確認する方法も有効です。集団分析結果の記録は、経年変化を継続的に把握するために5年間保存することが望ましいとされています。単年度の結果だけで判断するよりも、組織のストレス傾向を正しく把握しやすくなるでしょう。
職場環境改善施策を実施した組織では、その後の結果の変化を捉えることが重要です。改善施策の実施前後で複数年のデータを経年比較すれば、施策の有効性を検証できて、経営層へ報告する際にもエビデンスとして活用できるでしょう。継続的な変化をみれば、次の改善策の検討にも活かせます。
個人結果を従業員のセルフケアに活用する
ストレスチェックの個人結果は、従業員自身のセルフケアにも活用できます。従業員向けの活用方法を2つ紹介します。
自身のストレス状態や要因の把握に活用する
企業は、ストレスチェックの結果を従業員本人へ通知しなければなりません。通知には、個人のストレスプロフィールや高ストレスに該当するかどうかの判定結果、医師による面接指導の要否を含める必要があります。
従業員は仕事のストレス反応やストレス要因、周囲からの支援状況などを確認できます。高ストレスかどうかだけでなく、どのような要因が心身の負担につながっている可能性があるか把握してもらうことが大切です。
受検結果の通知後は、内容を必ず確認するよう従業員へ促しましょう。高ストレスと判定されている場合は、必要に応じて面接指導の申し出ができること、申し出による不利益は発生しない点を明らかにしておくと、結果を踏まえた対策を取りやすくなるでしょう。
自身に合ったセルフケアに活用する
個人結果を踏まえ、休養や睡眠、ストレス対処法の見直しなど、自身に必要なセルフケアの検討にも活用できます。セルフケアは、メンタルヘルス指針が定める「4つのケア」の1つに位置づけられる重要な取り組みです。例えば、次のような取り組みと効果が考えられます。
- 軽いランニングなど体を動かし、心身をリラックスさせる
- 腹式呼吸をゆっくり繰り返し、不安や緊張を和らげる
- 今の気持ちを書き出し、悩みを客観視して気づきを得る
企業としては、ストレスチェックの結果を従業員がセルフケアにつなげやすい環境を整えることが重要です。結果の見方やセルフケアに関する情報を提供したり、セルフケアへの正しい理解を促す研修を実施したりするのが有効でしょう。
セルフケアの重要性や推進のポイントは、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:セルフケアとは?メンタルヘルスケアの重要性と推進のポイント
ストレスチェックの活用事例
ストレスチェックをどのように実施・活用すればよいか、人事担当者がわからず困る場合があります。実際の活用事例を参考にすれば、活用方法を具体的にイメージしやすくなるでしょう。
職場内のストレス要因や課題は、業種や企業規模によって異なります。活用事例は、自社と類似した企業が参考にしやすいでしょう。
厚生労働省が運営している「こころの耳」では、ストレスチェックを含むメンタルヘルス対策の事例が公開されています。取組事例の検索画面では、「取組事例の主な内容」で「ストレスチェック」を選択して検索も可能です。業種や従業員数などで条件を設定すれば、自社に類似した企業の取組事例も見つけやすくなります。
ここでは、厚生労働省資料に掲載されている2つの事例を紹介します。
参考:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省
A社
従業員数50〜299人のA社は、本社が50人未満で、ストレスチェックの実施義務はありません。しかし、全社一丸で取り組む方針のもと、自主的にストレスチェックを導入しました。定期健康診断と同日に実施する工夫により、毎年9割以上の高い受検率を維持しています。
集団分析では、全国平均と比較して量的負担が高く、仕事のコントロールが低い部署や、上司の支援が低い部署が確認されました。改善策として、次の2点に取り組んでいます。
- 従業員の残業時間や休暇取得状況、時間あたりの付加価値生産額を見える化する
- 各部署の管理監督者に作業効率化などに向けた目標や改善案を検討させ、達成状況をモニタリングする
取り組みの結果、会社全体の総合健康リスクが改善し、メンタルヘルスに理解のある風土が醸成されました。上司・部下間のコミュニケーションの在り方も改善しています。
B社
従業員数1,000人以上のB社では、製造部門の特定の事業場で総合健康リスクが高く、グループ全体の平均と比較して、職場環境や身体的負担度、疲労感の数値に課題がみられました。
集団分析の結果を踏まえ、アンケートや現場観察で職場の実態を確認し、課題を抽出しました。本社の健康管理部門が、グループ全体と各職場の数値を比較したレーダーチャート資料を配付し、職場ごとのストレス状況を可視化する取り組みも行っています。
現状把握を踏まえ、暑熱対策や重量物の取扱作業、人員配置の見直しなどの改善策を講じました。改善後に実施したアンケートでは、暑熱環境と重量物の取り扱いによる負担感の低下が確認されています。
ストレスチェックを効果的に活用するためのポイント
ストレスチェックを有効活用するには、仕組みづくりが欠かせません。ストレスチェックを効果的に活用するポイントを3つ解説します。
PDCAサイクルに基づいて分析をする
ストレスチェック制度は、PDCAサイクルに沿って組織的に取り組むことが重要です。PDCAサイクルとは「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Act)」の頭文字を取った、取り組みを改善するためのフレームワークを指します。各ステップのポイントは次のとおりです。
- Plan(計画)
衛生委員会などで実施体制や受検方法、集団分析の方法などを調査審議し、実施計画や社内規程を策定します。 - Do(実行)
ストレスチェックの実施だけでなく、高ストレス者への医師による面接指導、就業上の措置、集団分析、職場環境改善など、関連する施策を順番に実行します。 - Check(評価)
実施体制や実施時期、集団分析など、実行の各プロセスを定期的に振り返りましょう。 - Act(改善)
振り返りから課題を整理し、次回以降の活動に反映させます。うまくいった職場の取り組みを他の職場へ横展開することも有効です。
ストレスチェックを年間を通じたPDCAサイクルに組み込み「やって終わり」の形骸化を防ぎましょう。
関連記事:ストレスチェック集団分析を活用!職場環境を改善する具体的なステップ
労働者が安心して回答・協力できる環境を整える
ストレスチェックを実施するうえでは、従業員への配慮が欠かせません。ストレスチェックの趣旨や意義を説明して正しく理解してもらうことで、従業員は不安や誤解なく受検できます。
「結果が人事評価に影響するのでは」など、従業員が不安を感じていると、正直に回答できず正確な調査結果を得られません。労働安全衛生法では高ストレス判定を受けた従業員が面接指導の申出をしたことを理由とした不利益な取り扱いを禁止しています。また、指針でもストレスチェックを受検しないことを理由とした不利益な取り扱いを行ってはならないと定めています。結果が人事評価に影響しないことを事前に丁寧に周知しましょう。
また、ストレスチェックの結果を、従業員の同意なしに企業へ提供することは労働安全衛生法で禁止されています。人事担当者や上司であっても、本人の同意を得ない限り結果を見ることができません。ストレスチェック結果の開示範囲についても、あらかじめ従業員へ周知しておくとよいでしょう。
実施時期に関しては、一時的な高ストレス反応が過剰に検出されないよう、繁忙期を避けて調整しましょう。一方で閑散期は、職場の潜在的な課題が隠れやすく、長期連休の前後は日常の数値が反映されにくくなります。人事異動の時期も避け、通常時の正確なデータを取得しやすいタイミングを選びましょう。
外部サービスを適切に活用する
ストレスチェックや従業員のメンタルヘルス対策では、事例活用やデータの継続的な取得が重要です。従業員のフォローや職場改善の取り組みを続ける手段としては、継続できる体制を社内で整えるか、外部サービスをうまく活用する方法があります。
ストレスチェックや集団分析、外部EAP機関による相談窓口などを外部委託している企業は多くあります。外部の委託先にも法律に基づく守秘義務が課されるため、本人の同意なく事業者に提供されないよう適切に管理されます。委託時には、データを適切に保管・管理できる体制かを確認しましょう。
クラウド型の健康管理システムを活用すれば、ストレスチェックや健康診断の結果の一元管理が可能です。管理工数の削減や、タイムリーな個別フォローの実現にもつながるでしょう。
自社に合ったサービスを取り入れ、従業員を継続的にフォローできる体制を整えましょう。
ストレスチェック結果を活用し、事業の健全な運営につなげよう
ストレスチェックを有効活用するには、集団分析や個人結果を職場環境改善とセルフケアに活かし、PDCAサイクルで継続的に取り組むことが大切です。従業員が安心して回答できる環境づくりも欠かせません。実施から集団分析、フォローまでを一貫して支援する外部サービスを取り入れれば、人事担当者の負担を抑えつつ、継続的な運用を実現できます。
ウィーメックスのストレスチェックでは、実施の代行や労働基準監督署への報告はもちろん、結果の集団分析や職場環境の改善まで、幅広いサービスを提供可能です。
受検者一人ひとりがストレスチェックの結果を活かせるよう、50年以上にわたりヘルスケア事業に従事してきた実績を活かし、サポートいたします。
ストレスチェックの導入や見直しをご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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