目次
ハラスメントとは
ハラスメント防止策を検討するには、どのような行為がハラスメントにあたるのかを正しく理解しておく必要があります。ここでは、職場におけるハラスメントの定義や法律上の位置づけ、企業の責任について見ていきましょう。

職場におけるハラスメントの定義
職場におけるハラスメントとは、従業員の尊厳や人格を傷付けることで職場環境を悪化させたり、従業員が能力を十分に発揮できなくなるような言動を指します。
ハラスメントの種類については後述します。
法律上の位置づけと企業の責任
企業には、従業員の安全に配慮する「安全配慮義務」があり、ハラスメント防止も含まれます。ハラスメントが発生した場合、企業は速やかに防止措置を講じなければなりません。
また、以下の法令でもハラスメント防止が定められており、企業は法的責任を負います。
- 労働施策総合推進法
- 労働基準法
- 育児・介護休業法
- 男女雇用機会均等法
関連記事:安全配慮義務とは?根拠となる法律や事例、取り組み方を解説
ハラスメントの現状
令和5年度の厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」では、職場におけるハラスメントの現状が示されています。調査によると、過去3年間に勤務先でハラスメントを受けたと回答した割合で最も多かったのはパワハラで19.3%でした。次いで、顧客からの著しい迷惑行為が10.8%、セクハラが6.3%となっています。
また、業種によっても傾向が異なります。過去3年間にパワハラを一度以上経験した割合は建設業が26.8%と最も高くなっています。また、過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為を一度以上経験した業種は、生活関連サービス業・娯楽業、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業で16%台と高い傾向が見られます。
出典:厚生労働省ホームページ
(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001541298.pdf)
職場で起こりやすいハラスメントの種類
ハラスメントにはさまざまな種類があります。ここでは、職場で特に起こりやすい主なハラスメントの種類と、その具体的な行為について見ていきましょう。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメントとは、職場において行われる次の3つの要素をすべて満たすものを指します。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
ここでいう「優越的な関係」とは、職務上の地位に限らず、知識や経験、人間関係など、抵抗や拒絶が困難な状況も含みます。また、適正な範囲の業務指導はパワハラには該当しませんが、その範囲を超えて受ける側に身体的・精神的な苦痛を与え、働く環境を悪化させる行為が対象となります。
判断にあたっては、「社会一般の労働者がどう感じるか(平均的な労働者の感じ方)」がひとつの基準となります。
セクシャルハラスメント(セクハラ)
セクハラは、性的な言動によるハラスメントです。具体的には、性的な冗談やからかい、必要なく身体に触れることなどが挙げられます。
また、セクハラは男性から女性への行為に限らず、女性から男性、または同性間でも起こり得ます。固定的な性別役割意識が強いと、意図せずセクハラにあたる言動をしてしまうケースもあるため注意が必要です。
マタニティハラスメント(マタハラ)
マタハラとは、妊娠・出産・育児を理由に不利な扱いや精神的な攻撃をするハラスメントです。たとえば、産前産後休業や育児休業を取得した従業員の人事評価を下げる行為が該当します。「他の従業員に迷惑がかかる」といった発言により、就業環境を悪化させた場合、マタハラに該当する可能性があります。
ただし、妊娠・出産・育児に関する業務上必要な言動はマタハラに当たりません。たとえば、妊娠中の従業員の体調を考慮して業務内容を調整することなどは、適切な対応とされています。
カスタマーハラスメント(カスハラ)
カスハラとは、顧客や取引先によるハラスメントを指します。過大な要求や不当ないいがかりなど、主張内容に問題があったり、主張する内容には正当性があるが、主張方法に問題があるものが挙げられます。従業員への暴力や暴言、土下座の強要など脅迫を伴う行為も含まれます。
一方で、妥当な内容や方法によるクレームはカスハラには該当しません。
関連記事:カスタマーハラスメントにはどう対応すればいい?従業員のメンタルを守る方法も解説
リモートハラスメント(リモハラ)
リモハラは、テレワークやリモートワーク中にチャットやWeb会議のやり取りで行われるハラスメントです。パワハラやセクハラなど他のハラスメントと同様の内容に加え、Webカメラに映った部屋の様子に言及するなど、リモート特有のケースも見られます。対面時と異なり、他の従業員が気づきにくい点が特徴です。
ハラスメントの原因

ハラスメントは、特定の一つの原因によって起こるものではなく、複数の要因が重なって発生するケースが多く見られます。主な要因として、次のような点が挙げられます。
- ハラスメントに関する知識不足
- 職場内のコミュニケーション不足
- 無意識の偏見や固定観念
- 職場環境・組織風土の問題
例えば、分からないことを気軽に相談できない、失敗が許されないといった職場では、ハラスメントが助長されやすい傾向にあります。
関連記事:職場環境の改善を成功させるポイントは?進め方やアイデア、メリットを解説
ハラスメントの影響
職場でハラスメントが発生し、適切な防止策が講じられていない場合、企業には次のような悪影響が及びます。
従業員のメンタルヘルス悪化を招く
ハラスメントを受けた従業員はメンタルヘルスが悪化し、業務パフォーマンスの低下を招く可能性があります。状態によっては休職が必要となることもあり、結果として職場全体の生産性が下がります。
また、当事者以外の従業員にも悪影響が及ぶ点に注意が必要です。安心して働けないと感じた従業員が転職を検討するケースもあります。
関連記事:メンタルブレイクから従業員を守るには?健全な職場運営のために必要な対策を解説
離職率の上昇
ハラスメントの被害者が退職に追い込まれてしまうことも少なくありません。このような状況では、他の従業員も職場に不信感を抱き、転職を考える人が増える可能性があります。その結果、離職率が上昇し、人材の流出につながります。
企業イメージの低下
近年ではSNSで情報が瞬時に拡散されるため、ハラスメントが横行する企業はその事実が外部に知られる恐れがあります。これにより企業イメージが低下し、求職者から敬遠されて新規採用が難しくなる可能性があります。顧客離れや株価の低下につながることもあります。
行政指導や損害賠償請求のリスク
前述のとおり、法令では企業にハラスメント防止が義務づけられています。防止策を講じずにハラスメントが発生した場合、法令違反として行政指導を受け、企業名が公表されるリスクがあります。
さらに、安全配慮義務違反として被害者から損害賠償を請求される可能性もあります。
職場でのハラスメントの防止策
従業員を守り、法令違反を防ぐためには、ハラスメントの防止策を整備しておくことが必要です。ここでは、具体的に実施すべき取り組みを紹介します。
就業規則への規定と周知
まず、就業規則にハラスメントを行った場合の取り扱いを明記しましょう。そのうえで、ハラスメントに対して厳正に対応する方針を社内全体に表明・周知することが重要です。自社ではハラスメントを許さないという姿勢を明確に示すことで、抑止効果が高まります。
また、どのような行為がハラスメントに該当するかを就業規則に例示しておくと、無自覚なハラスメントの発生防止にもつながります。
相談窓口の設置
ハラスメントの被害を受けた従業員が安心して相談できるよう、相談窓口を設置しましょう。その際、形式的にならないよう、専門知識を持つ担当者を配置するか、外部機関へ委託するなど実効性のある体制を整えることが大切です。
また、相談の対象は被害者だけでなく、ハラスメントを目撃した従業員も含めることが望ましいです。被害者が相談しにくい状況でも、周囲の従業員からの報告で早期対応につなげられます。
関連記事:EAP(従業員支援プログラム)導入で変わる職場のメンタルヘルス対策とサービス選定のコツ
セミナーや研修会の実施
知識不足により、無自覚のうちにハラスメントにあたる言動をしてしまう人も少なくありません。正しい知識を身につけ、被害者にも加害者にもならないようにすることが重要です。そのために、管理職と一般従業員に分けてセミナーを実施し、ハラスメント防止に関する理解と意識を高めましょう。
ウィーメックスでは、こうしたハラスメント防止に役立つ研修プログラムも提供しているため、自社の課題に合わせた導入の検討をおすすめします。
研修サービス(Wemex ストレスチェック)
アンケート調査の実施
ハラスメントは、従業員の働きやすさやモチベーションに大きな影響を及ぼします。しかし、表面化する前に気づくのは容易ではありません。定期的にアンケートを実施することで、従業員のハラスメント防止に対する意識や職場の現状を把握できます。ハラスメントが発生している場合には、その実態把握にも役立ちます。
ウィーメックスではストレスチェックサービスを提供しており、追加質問によってハラスメントの動向確認も可能です。職場のハラスメント防止策として、ぜひ活用をご検討ください。
Wemex ストレスチェック
ハラスメントの法的責任
自社でハラスメントが発生した場合、企業や加害者が法的責任を問われる可能性があります。ここでは、想定される主な法的責任の内容を見ていきましょう。
行政上の措置の対象になる可能性
必要な配慮を行う義務があります。ハラスメントが発覚した場合、企業がその義務を果たしていないと判断され、行政による指導・助言や勧告、企業名の公表など、行政上の措置の対象となる可能性があります。
民事責任
ハラスメントによって精神的または身体的被害が生じた場合、民法上の不法行為に該当し、加害者は被害者に損害賠償責任を負います。また、企業も使用者責任や安全配慮義務違反を理由に、被害者から損害賠償を請求される可能性があります。
刑事責任
ハラスメントの内容が悪質な場合は、刑法上の犯罪(暴行罪や名誉毀損罪など)に該当することがあります。この場合、刑事事件として捜査の対象となり、内容や程度によっては刑事責任を問われ、刑事罰が科される可能性もあります。
職場でハラスメントが発覚した際の対応
職場でハラスメントが発覚した場合は、人事や担当部署が迅速かつ適切に対応する必要があります。
まず、当事者からの事情聴取や第三者からの情報を収集し、客観的に事実関係を整理します。次に、影響を受けた従業員への配慮を最優先に行い、必要に応じて外部専門家も活用しながら、精神的なケアや二次被害の防止に努めます。
その上で、事実に基づき必要な措置を検討・実施します。最後に、再発防止策を策定・実施し、定期的なアンケート調査などを通じて取り組みの効果を継続的に確認していくことが、再発を防ぎ、安全な職場環境を維持するための鍵となります。
ハラスメント防止には多角的な取り組みが重要
ハラスメントは種類が多く、発生要因もさまざまです。単一の施策だけでは十分な防止効果が得られない場合があります。そのため、ハラスメント防止には多角的な取り組みが求められます。
まず、適切な対策を講じるために、研修やセミナーで正しい知識を身につけましょう。さらに、社内のハラスメント実態を把握し、職場環境の改善にも取り組むことが重要です。
まとめ
ハラスメントが発生すると、企業に多大な悪影響を及ぼします。法的責任を果たすうえでも、防止施策に積極的に取り組む必要があります。ハラスメントを減らすことで、従業員がパフォーマンスを十分に発揮し、生産性の向上にもつながります。
ウィーメックスのストレスチェックサービスでは、自社に合わせて項目を追加できます。高ストレス者の判定に加え、現状把握や職場環境の改善にも活用できるため、この機会にぜひご検討ください。